2006年03月05日

旅立ちとはじまり

「えぇっと、荷物は用意できた…お別れの挨拶も大体終わったし、後は…」
「リーザ!!村を出て行っちゃうって本当?!」
「そっか、ペーターに挨拶してなかったや。…うん、本当だよ」

今日、峠の村という名前の村から、一人の少女が旅立つ。名前はリーザ、彼女は通っていた学校が不祥事を起こしたため都会へと一人で立つ羽目になったのだ。
彼女は詰め込めるだけつめこんだカバンを重そうに持ち上げ、少年に微笑んだ。

「大丈夫大丈夫!ずっとあっちにいるってわけじゃないし、私は大人になればこの村に帰ってくるからね」
「…もしかして上級の学校にも都会で通うつもり?」
「うん、そうだよ?でも私は絶対に戻ってくる。これだけは約束できるわ」

少年は微妙に腑に落ちない顔をしていたが、リーザはかぶっていたフードを外して自らの頭に生えていたバナナをもいで手渡した…
そう、彼女はなぜか頭にバナナを生やしていた。とある騒ぎの最中なぜか身についてしまった特技と言うか体質だった。遠目から見れば束ねた髪と見えなくも無いがある程度じっくりみるとばれてしまうためその騒ぎ以来彼女は女性物のフードをかぶって生活している

「うー…ありがと…でも気をつけてね……かわらないでね?」
「わかってる。それにどこへ行っても私は私、なの」

にっ、といたずらっ子のように笑った後、彼女の母が呼んだ馬車の音がした

「じゃ、いってきまーす!」

にこやかな笑顔で、彼女は愛する村に手を振った



ふもとの村、という村でも旅立とうとする者がいた…最も彼の場合はリーザほど明るい旅立ちではなかった
人狼さわぎがあった事で教会から移転を命じられたのだ
彼の名前は、ジムゾン。村と村の人々を愛している神父

「しかし…移転先がスラム街とは…住めないから通って行けっていうのも…」

だがいくら彼が一人愚痴っても上からの命令に屈するほか無かった
誰にも、旅立ちの挨拶はしていない。それどころか誰にも知らせていない

「さて…行くとしましょうか」

たった1枚の紙に、別れの言葉の全てを詰めて机に置く、これで本当に最後だ
まだ夜が明けない内に足を速めて村から逃げるように出て行く…
翌日、きっと皆は驚くだろう…模造紙まるごと1枚使った置手紙に…
その反応が見れない事、ジムゾンにとってはそれが残念でならなかった



「えーっと、えっとぉ…よし!」

血塗られた村と言う物騒な名前の村でも、旅立とうとする青年がいた
彼はヨアヒム、村で診療所を開くつもりだったが、あまりにも村のパン屋が怖すぎるのとそれだけの資金が集まらないのが原因で町の小さな病院に勤める事になったのだ
もちろん、資金の目途さえ立てば村に戻るつもりだ…
たとえパン屋や幼馴染の村娘が怖くっても、この村は彼にとって故郷だった

「いってきます」



黒く長い、まるで作ったような髪の毛。わざとそうしてあるらしい、不気味な人形風のメイク、真っ白に塗った肌と、誇張しすぎて本当に人では無いかのような目元、唇も真っ赤な口紅、頬紅はつけていない。黒く、フリルのついた服、赤い薔薇のコサージュがごてごてしている…彼女はロザリナと名乗った
勿論、本当の名前ではない。この姿で、わざと目立つ姿で市場開拓のため町に潜伏するという任務をもつ裏の人間だった
彼女は喋らなかった。声ばかりはどうしようもないから、喋ることが出来ない振りをして筆談で他人と会話した…ただ、彼女が部屋を借りている場所の大家とは事情を知っているので普通に喋っていた

「そういえばさ…今日の午後3人新しい入居者がくるから。これからは僕と喋る時も筆談にしてね。僕もこれからヤコブさんのことロザリナさんとしか呼ばないから」
「う…一般の人か…ならしょうがないだぁよ」

ロザリナ、もといヤコブはそういうと時計を見た
そろそろ、活動を開始しなければならない

「んじゃあ、そろそろいってきますだぁよ。…帰って来るころにはその3人は来てるって思っていていいんだな?」
「うん、そうだね。いってらっしゃい」

朝起きてすぐにした変装が崩れていないか、鏡を見て一瞬だけ確認した後、これまた派手な赤と白のリボンがついた黒い帽子を被り、大きなカバンをもって町へと出て行った


posted by 黒味缶 at 21:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 人狼BBS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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